ALBCD 006 – Live in Milan: Duo, Trio, Quartet – Enrico Intra, Franco Ambrosetti

ライヴ・イン・ミラン
/エンリーコ・イントラ、フランコ・アンブロゼッティ

欧州の歴史ある音楽をベースに、米ジャズの語法に頼ることなく早くも50年代に独自の「イタリアン・モード」を確立したミラノのエンリーコ・イントラ (p)と、M.デイヴィスをしてその「黒さ」を認めさせたスイスのフランコ・アンブロゼッティ (tp)。欧州2大マエストロの奇跡の邂逅となる本作は、ほどなく姿を消すミラノ市内のある歴史的建造物のなかでおこなわれた記念碑的レコーディング・ライヴ。半世紀に渡って巨匠が眺めてきた「欧州的ヴィジョン」の全貌をここにお届けする。

Enrico Intra Trio incontra Franco Ambrosetti
Questo gruppo nasce a valle di una lunga, ma sinora episodica collaborazione tra questi due grandi artisti della scena europea. Ambrosetti e Intra avevano già suonato insieme in diverse occasioni e il trombettista è stato più volte invitato come solista nella Civica Jazz Band diretta dal pianista e compositore milanese, ma questa è però la prima volta che i due musicisti hanno costruito insieme un piccolo gruppo, in gran parte basato sulle composizioni originali di entrambi.

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Barcode: 4560312310069 SKU: albcd006 Category: Tags: , , , , , ,

Description

Cat#:

Format: CD / ALBCD-006
ARTIST: ENRICO INTRA / FRANCO AMBROSETTI
TITLE: LIVE IN MILAN – DUO, TRIO, QUARTET
JAN: 4560312310069

Lineup:

Franco Ambrosetti (tp)
Enrico Intra (p)
Lucio Terzano (b)
Tony Arco (ds)

Rec data:

Recorded at la Sala Certificati del Comune di Milano, via Rastrelli, Milano Italy, on March 4, 2009
Sound engineer : Massimiliano Capellini
Photo [C] 2009 Roberto Cifarelli
[C][P] 2009 albóre jazz

Album previews

Liner notes

L’incontro discografico tra il trombettista svizzero e il pianista e compositore italiano è il primo esempio di collaborazione organica, all’interno di un piccolo gruppo, tra due protagonisti del jazz europeo. C’erano state, in precedenza, partecipazioni orchestrali di Ambrosetti con la Civica Jazz Band di Intra, ma stavolta la situazione era completamente diversa. Con nuove composizioni (scritte per l’occasione) e splendidi evergreen, la musica trova in questo album una dimensione raccolta e al tempo stesso incisiva, articolandosi nella dimensione del trio, organico prediletto dal pianista sin dagli anni ’50, nel più intimo dialogo del duo tromba e pianoforte, nel trainante e coinvolgente gioco del quartetto al completo. Un incontro di alto contenuto poetico, che esalta la natura relazionale del jazz, l’ascolto reciproco che produce un intenso interplay anche tra musicisti con un approccio differente, da europei, alla lingua jazzistica. Da una parte, Ambrosetti riprende in una chiave lirica e fortemente ritmica la grande tradizione del trombettismo americano degli anni ’50 e ’60, portandola all’interno di un linguaggio dai toni scuri, dallo swing tagliente che, all’occasione, sa stemperarsi in un solare gioco melodico. Un trombettismo, come sottolineava Miles Davis parlando proprio del jazzista svizzero, legato alla matrice nera del jazz. Dall’altra parte, Enrico Intra coniuga all’europea l’estetica jazzistica, vi porta elementi provenienti dal mondo euro colto, sia sul piano compositivo e coloristico sia nel sublime tocco pianistico, ma senza perdere mai, in nessun momento, il senso dello swing e la consapevolezza della linea afroamericana del jazz; in questo sta la sua differenza da tanti altri musicisti europei e la sua grande originalità. Insieme ai due protagonisti, la batteria di Tony Arco e il contrabbasso di Lucio Terzano svelano una ricchezza di accenti, una completezza di tratto, un senso del dialogo collettivo che sono alla radice di una duttilità indispensabile per dare equilibrio all’incontro tra due forti, e differenti personalità, quali Intra e Ambrosetti. – Maurizio Franco

スイスのトランペッターとイタリアのピアニスト/コンポーザー、ヨーロッパ・ジャズの2人の主役にとって、小規模編成のレコーディングでは今回が初の顔合わせとなる。かつて、イントラ率いるチーヴィカ・ジャズ・バンドにアンブロゼッティが参加したことはあったが、今回はそれとはまったく異なる。本作では今回のために書き起こされた新曲とスタンダード数曲を通して、濃密かつ明快な音楽を、50年代から活躍するピアニストによるレギュラー・トリオ、トランペットとピアノのデュオによる親密な対話、機動力溢れる全員参加のクァルテットを通して耳にすることができる。高い次元の詩的コンテンツは、ジャズの特徴である<関係性>を高め、お互いのサウンドに耳を傾けることによって激しいインタープレイを生み出す。ミュージシャンごとにアプローチの手法こそ違えども、いずれもジャズの言語を用いたヨーロッパのそれである。
アンブロゼッティは、叙情性、そして力強いリズムを基調に50〜60年代の偉大なるアメリカのトランペット・マナーの伝統を再現し、それらを語法のなかに取り入れる。ダークなトーン、ときにメロディのなかに明るく溶け込む、切れ味の良いスウィング感をもってである。それはまさしくマイルズ・デイヴィスがこのスイスのジャズ奏者について触れながら強調したトランペット・マナー、つまり<ジャズの黒い原型>に関わるものである。
一方のイントラは、ヨーロッパのジャズ美学に基づき、ヨーロッパ教養に由来するエレメントを提示する。色彩豊かな作曲技法、卓越したピアノ・タッチ。しかしその一方で決してスウィング感、アフロ・アメリカンなジャズ感覚を失わない。これこそがまさにイントラが他のヨーロッパのミュージシャンと異なる点であり、彼の偉大なるオリジナリティなのである。
またドラムのトニー・アルコ、ベースのルーチョ・テルツァーノが聴かせる、豊かなイントネーション、完成度の高いリズム・ライン、インプロヴィゼーションに基づく対話感覚。これらは、強力で異なるパーソナリティを持つ2人のミュージシャン、イントラとアンブロゼッティの邂逅には欠かすことのできない柔軟な基礎要素となっている。- マウリーツィオ・フランコ

Production notes

昨年(2008年)Schema Rearwardからリイシューされた『Jazz in Studio』(Columbia 33QPX 8029 – LP -1962)、CDにカップリングされた1957年のサン・レモ国際ジャズ・フェスティヴァル音源『Enrico Intra – Trio』(Voce del Padrone 7E-MQ19)で大きく注目を集めた欧州ジャズ界の巨匠、エンリーコ・イントラ。
私が最初にイントラ氏と面識を得たのは、ミラノ市内にある「Associazione Culturale Musica Oggi」を訪れた際のことでした。この団体については、先に『ラザー・オッド…/トニー・アルコ・トリオ』(ALBCD-002)のなかで詳しく触れていますが、すなわちイントラ氏がフランコ・チェッリ氏、マウリーツィオ・フランコ氏とともに運営するジャズ振興団体で、ミラノ市主宰の音楽学校のなかに「Civici Corsi di Jazz」というジャズ・コースを設けるほか、イントラ氏率いるチーヴィカ・ジャズ・バンド、ISEOジャズ・フェスティヴァルの運営などをおこなっています。このジャズ・コースではイタリアン・ジャズ史に名を刻む錚々たるミュージシャンが教鞭を振るい、ジャズというひとつの<文化>に対する理解の深化と新しい才能の育成に努め、またフェスティヴァル運営については、今年もフランコ・ダンドレーア(p)、エンリーコ・ピエラヌンツィ(p)、パオロ・フレーズ(tp)、クラウディオ・ファゾーリ(sax)といった豪華ミュージシャンの出演が予定されています。

日本では上述のリイシュー盤を除き、残念ながらイントラ氏の活動についてはほとんど知られていませんが、演奏活動はもとより、こうした教育活動、また指揮者としての多大な文化貢献を通じて、ジョルジョ・ガスリーニとともに<ミラノ2大巨匠>のひとりとして確固たる地位を築いています。
1935年生のイントラ氏は、プライヴェート・レッスンによってピアノを習得。戦火真っただ中の7歳のとき、兄弟のジャンフランコ(p)と連れ立って、アメリカ人のグループで演奏していたと言います。プロとして活動を開始するのは1951年。57年のサン・レモ出演は上述のリイシューによって知られるところですが、この頃の状況について触れるならば、ジャズはアメリカ人が演奏するものだという当時の偏見を逆手にとり、レスター・ヤングとラス・フリーマンの名を掛け合わせた「レスター・フリーマン」という偽名で録音を残すほか、除隊後にはバッソ=ヴァルダンブリーニ楽団にも参加しています。59年には市内に<イントラズ・ダービー・クラブ>を開き、キャバレー・ショーとジャズを1時間ごと交互に演奏。フランコ・チェッリ(g)、ジャンカルロ・バリゴッツィ(sax,fl)、渡欧組のミュージシャンらとともにミラノのシーンを盛り上げました。
しかし特筆すべきは何より、フランコ氏が指摘するように、アメリカのジャズの語法に頼ることなく、ヨーロッパの歴史ある教養音楽にジャズのスウィングを取り入れ、1950年代にして早くも独自の<イタリアン・モード>を確立した点にあります。

本プロジェクトは、そんなイントラ氏とアルボーレ・ジャズの出会いによって生まれたもので、早速ギリシャの小島に暮らすアンブロゼッティ氏に電話でコンタクトを取り、こうして実現に至りました。セッションの解説については、フランコ氏の妙を得たライナー・ノーツに譲り、ここでは今回のプロジェクトに欠かせないもうひとつの大きな要素、ミラノ市評議会による多大なるご協力をご紹介しておきたいと思います。
今回の録音は、ミラノ市内の歴史ある建造物にグランド・ピアノを含むすべての楽器、レコーディング機材を運び込んで録音したものです。ドゥオモの裏側に位置するこのラストレッリ通り (Via Rastrelli)〜ラルガ通り(Via Larga)一帯は、16世紀末に整備されたエリアで、王宮や公爵の館、劇場が建ち並ぶがゆえに、近隣諸国による度重なる侵攻、ナポレオンによる支配を受けた、まさにミラノの歴史そのものを体現する一画です。現在この建物はミラノ市の所有となっていますが、すでに民間への売却が決まっており、この先わずかの間にその姿を大きく変えてしまいます。「市民に開放された、光源豊かなデザイン」をテーマに、大理石をふんだんに用い1929年に現在の姿に改装されたこの優雅なホールの記憶を、2人のミュージシャンによる歴史的な邂逅とともに録音によって残そうというのが、今回のプロジェクトのもうひとつのテーマです。
偉大なマエストロたちとともに、こうしてミラノの歴史の一幕を後世に残すことができたことを大きく誇りに思います。- 豊田 聡(2009年リリース当時のテキストです。)